- 2015-1-13
御成座の映写室の隅には2匹のなまはげがいます。
泣いている映写技師や悪い映写技師がいないかと見守っているのです。
ある日映写技師が悪いことをしました。
部屋の隅になまはげがいることを忘れてつい魔が差したのです。
映写技師の悪事をなまはげたちが見逃すはずはありません。
「悪い映写技師はいねが~!ピントをしっかりあわせないめんどくさがりやの映写技師はいねが~!」
赤いなまはげが恐ろしい声で映写技師に迫ります。
「悪い映写技師はいねが~!画面に映り込んでるゴミの影をそのままにしている映写技師はいねが~!」
緑のなまはげが恐ろしい形相で映写技師に迫ります。
あまりの恐ろしさに映写技師はとうとう泣き出してしまいました。
「うわ~ん!こんどからしっかり映写するから許してよ~!」
映写技師が泣き出したのでなまはげたちは更にまくし立てます。
「泣く映写技師はいねが~!泣き叫ぶ映写技師はいねが~!」
とうとう映写技師はなまはげたちによってまっくらな押入れに入れられてしまいました。
「こわいよ~!まっくらだよ~!ここから出してよ~!」
映写技師は泣き叫びますが、なまはげたちは聞き入れてくれません。
やがて押入れの外になまはげたちの気配がなくなりました。
映写技師は泣き疲れて眠ってしまいました。
どれほど経ったでしょうか。映写技師が目を覚ましました。
怖々と押入れの中を見渡す映写技師は、徐々に暗闇に目が慣れてきたのに気づきます。
やがてまっくらに思えた押入れの中にぼんやりと何かが見えました。
「あれは…そうだ、ポスターの包み紙の山だ…よし、あれを燃やしてこの押入れを明るくしよう!」
包み紙の山に手を伸ばした映写技師は、その時あることに気が付きました。
「こ、これは…!包み紙の間にも…ごくまれに映画のポスターがはさまっているじゃないか…!」
そうして映写技師は夢中で包み紙の山をかきわけ、いくつかの映画ポスターを掘り当てたのです。
「お~い!なまはげ~!映画ポスターが!映画ポスターが出てきたぞ~!」
するとその瞬間押入れの扉がゆっくりと開き、まぶしい光と共に聞き覚えのある声が響き渡りました。
「よくやった映写技師…いや、ワシの息子よ!」
そこに立っていたのは赤と緑のなまはげのお面を外した…映写技師のおとうさんとおかあさんでした。
「ええっ!?あのなまはげが父さんと母さん?すっかり騙されたよ~!」
アハハハハハハと、家族3人で笑い合います。
そうして映写技師とおとうさんとおかあさんは、押入れから出てきた今日の戦利品を仲良くながめたのでした。
「お父さん、ほらジミー・ウォングの功夫映画だよ~すごいな~!」と映写技師
「あら、こっちのジョン・フォードもなかなかのものよ」とお母さん
「ワシはこの海外オリジナルポスターが良いの~」とお父さん
みんなほんとうに楽しそうですね。めでたしめでたし。