うさぎのてっぴーについてのお知らせ

  • 2021-8-24

秋田県の大館市にはおそらく日本で唯一と思われるうさぎ放し飼いの映画館があり、真っ白なうさぎが気の向くまま劇場ロビーを駆けまわったり寝そべったりごはんを食べたりして暮らしていました。そのうさぎは千葉の小学校で生まれましたが、この映画館が7年前に再開する時に学校からもらわれて秋田へとやってきました。うさぎはしばらくの間は日中を小屋の中で過ごし、上映が終わった夜の時間にだけロビーを駆けまわる暮らしでしたが、ある日劇場を訪れたとても人なれをしたうさぎに倣い、全ての時間をロビーで自由に過ごす放し飼いをすることに。それ以前まではうさぎ小屋に連れ戻されるのが嫌で人から逃げ回っていたうさぎでしたが、放し飼いにしてからは徐々に人にも馴れて気持ちも穏やかになりました。撫でられるのが大好きなうさぎはお客さんとのふれあいも嫌いではなく、小屋の前で寝そべりながら映画館へやってくる人々を眺めるのが日常になりました。冬の寒い日はストーブに当たり、天気の良い日は日向ぼっこを楽しみ、おなかが空いたら小屋の中でご飯を食べ、眠たくなったらソファーの下へと潜ります。そんな広いロビーにたった一匹だけのうさぎにとっては、風船やボールが共に過ごす友達でもありました。ロビーが真っ暗になる真夜中には、うさぎは風船やボールと寄り添って眠りました。ロビーでは時折看板作業も行われていて、うさぎは大きな板に大きな絵が描かれていくのを不思議そうによく眺めました。3歳になるまでは健康そのものだったうさぎでしたが、初めて連れて行った動物病院で先生から驚くべきことを告げられます。男の子であると聞かされて疑わずに育ててきたうさぎは、なんとまさかの女の子だったのです。とはいえ驚いたのはもちろん人間だけのこと。当のうさぎは今更何をと言わんばかりに変わらずな毎日を過ごしました。やがてうさぎは映画館へやって来るお客さんたちからの人気者となり、インターネットにアップされるうさぎの写真や動画を楽しみにしてくれている人たちが増えていきました。絵看板には隠れうさぎが描かれ、映画館の入場券やチラシにはうさぎの写真が当たり前のように使われ、いつしかうさぎは映画館にとっては無くてはならない存在となっていました。でも人間にとっての7年間は、うさぎにとっては十倍近くもの長さに相当する年月でした。うさぎもだんだんと年を取り、若い頃のように元気に走り回ることも少なくなりました。ロビーやクッションのうえで寝そべったまま、あまり駆け回らずにのんびりと一日を過ごすことが多くなりました。以前はこどもが苦手だったうさぎでしたが、年をとってからはこどもから逃げることもなくなりました。近所のこどもたちが「てっぴーてっぴー」とやって来れば、そのふさふさの身体を優しく撫でさせてあげるのでした。今年の夏は暑かったので、日向ぼっこで少し調子を崩すこともありました。それでもすぐに元気になって、大好きなたんぽぽの葉っぱをおいしそうに食べました。うさぎが元気に暮らしていることが、何よりも嬉しいことでした。ドアの前で外から摘んでくるたんぽぽを待つうさぎが大好きでした。身体を撫でられて気持ちよさそうに歯を鳴らすうさぎが大好きでした。カメラを持つ手に身体を潜り込ませ、撫でることを催促するうさぎが大好きでした。てっぴーが大好きでした。みんなてっぴーのことが大好きでした。虹の橋を渡ったのでもいい、月に帰ったのでもいい、映画館のスクリーンに映る映画の中へ入り込んだのでもいい。そっちでも変わらずのんびり暮らしておくれよ。御成座に来てくれて、本当にありがとう、てっぴー。

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8月23日(月)14時20分過ぎ、当館で7年間暮らしたうさぎのてっぴーが永眠致しました。7歳半の生涯でした。生前の皆様からのご厚意に感謝致します。

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